ちょっと節穴

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NHKスペシャルドラマ 『浮世の画家』ネタバレ感想

原作を読んだのがもう随分と昔なのであんまり覚えてないんですが、かなり原作とは雰囲気が違ったように感じました。
原作の方がもっと淡々としていて、だからこそかえって不気味というか。
 
でも、今回のドラマもかなり良かったと思います。
 
カズオ・イシグロという人の作品は、そのほとんどが語り手の主観で語られます。そしてその「語り手」というのがいわゆる「信頼できない語り手」です。
つまり、語り手の主観と「では実際にどうだったか」にズレがあるのです。
 
そして今回のこのドラマはそれをとてもうまく表現していたと思います。
 
主人公の小野は、戦時中の日本を鼓舞するような作風の画家としてそれなりに成功して弟子もたくさんいました。戦争関係の委員会の委員にもなっていたようなので、それなりに社会的な信用もありました。そして終戦とともに彼の作風は時代に合わなくなっていき、弟子たちは自分の元から去っていき、本人も隠遁生活を送っています。
 
と、いうのが小野本人の認識です。しかし画家としての小野の評価にしても、弟子たちが彼の元を去っていった理由にしても、本人の認識と実際のところには大きな隔たりがあり、そのことを「下の娘の縁談」で表現してあります。
本人も「実際のところ」を全く分かっていないかというとそういうわけでもなく、心の底の底では分かっている、でも認めたくない……。からどんどん不安定になっていき、本質とは少しズレたところで変な弁解をしてしまったり、ちょっとした人の態度などにも過敏に反応してしまうようになります。そうやって自分を納得させようとするんだけど、うまくはいきませんよね。
 
結局のところ、自分の罪悪感との戦いに勝つためには「本当のところ」を認める必要がありますから。
 
このドラマを観ていて思い出したのが、ミヒャエル・ハネケ監督の『隠された記憶』です。あっちは救いがあんまりなかったけど、こっちは最後、一応救われて終わってよかったです。